わからなくなっていく恐怖2020/06/20 18:26

いろんなことが分からなくなっていくというのは、

どれほどの不安でしょうか。

時々、母の気持ちを想像してみます。

 

昨日も、可哀想なことがありました。

 

平日、

母は9時ごろから14時近くまで、

デイサービスRION

トレーニングしてもらってきます。

 

睡眠薬を飲まなかったので、

昨日は元気に参加できたようです。

前日とは全く様子が違ったと、

リオンさんがニコニコ報告してくれました。

 

そこまでは順調だったのですが。

 

ひと騒動があったのは、

帰ってきて小一時間たった頃でした。

 

私が、

早く母の部屋へいかなくちゃ、と思いながら

やりかけの仕事を片付けていると、

手を叩いて呼ぶ音がしました。

行ってみると。

 

「ここのことが、何もわからなくなった。

私、本当に馬鹿になってしまった…

どうしよう、怖い…」

 

母は、涙目になってプルプル震えています。

 

自分が今どこにいるのか、

わからなくて不安になったようです。

 

「大丈夫だよ…一緒にいるよ…

 そうやって、ちゃんと話してくれられているから、

 頭おかしくなんかないよ…」

 

手を握ったり背中をさすったりしていると、

しばらくして、だいぶ落ち着きました。

 

けれど。

「何か甘いものが食べたい」

と言いだしました。

 

不安になったとき

甘いものが欲しくなるのはわかります。

認知症によくないと言いますが、

そんなことも言っていられません。

 

でも。

持ってきたものをあっという間に平らげて、

いうのです。

「こんなの、すぐになくなった。

もっと、もっと、たくさん食べたい」

 

う~ん…。

 

言い方が、

なんかちょっとおかしいのです。

押しが強すぎて、

どこか、普通じゃない感じ。

 

認知症の方が、

食欲異常をおこして

ものすごく食べてしまったりなさることがある

という話はよく聞きます。

 

こんな感じなのかな…

 

不安で空いてしまった胸の穴を

食べ物で埋めようとしているような。

 

切ないね…

でも、食べるのは我慢しようね。

 

またまた、

ソルフェジオ音叉のCDが登場です。

不安な時にいいという音をかけてみました。

 

それが効いたのかどうかはわかりませんが、

案外すっと、

それ以上は言いつのらなくなりました。

 

部屋からパソコンを持ってきて

母の横で用事をし始めました。

「本が読みたい」というので

本棚から、母の大好きな

田辺聖子さんの本を持ってきたのですが、

古典の紹介本だったので

ちょっと難しかったようです。

ご愛用の「天眼鏡」こと虫メガネを片手に

「うーん。これは何と読むのかわからない」

などと言って苦労しています。

 

でも、

穏やかな時間が戻ってきました。

 

夫が夕飯を作ってくれている音がします。

妹も、もうすぐ帰ってくるでしょう。

 


              高尾山。樹々の間を抜けていく道。