今日は、昨日から松屋銀座で開催の、「ユキ・パリス
幸せをよぶ手仕事」展へ行ってきました。
先日のブログでも書きましたが、私たちはこの展示会と連動して発売された本の編集に関わっているので、夫はほとんどの品を見ています。でも、本にするための作品としてみるのと展示されているものを鑑賞するのとでは見方が違って、とても新鮮だったようです。そして私はというと、作品の撮影が終わった後に合流してユキさんにインタビューをしたので、一つ一つゆっくり拝見する暇はなく、実物をじっくり眺めるのはほぼ初めてでした。
とにかく、圧倒されました。
入ってすぐのところにはサンプラーが、それから教習布が展示されていて、ほとんどは生徒さんたちが刺しゅうしたものなのですが、そのレベルからしてもう、息を飲むほど。一つ一つの目が緻密ですし、かけつぎなどは、この細かい布目を全部針と糸で作りだしたなんて、とても信じられません。どういうものなのかをあらかじめ聞いて知っていても信じられないくらいですから、知らなければ、単に布を切り取って縫いつけたのだろうと思ってしまうでしょう。そのせいか、あまりじっくり見ないで通り過ぎる方もあって、「もったいない!」と、思わず呼び止めたくなってしまいました。
見る方にも、ある程度の知識と想像力が必要です。何もかも機械でできてしまう現代人には、たとえば針の一本一本まですべてが手作りだった時代のことなど、どうしても想像しきれないところがあります。それを、どこまでありありと思い描けるかで、感動の度合いが違ってくるのではないかと思います。
それにしてもまったく、人間って、どこまですごいのでしょう。
もう、どう表現したらいいのかわからなくて、自分の語彙の乏しさに悲しくなってきますが、いったいどんな人が、どのようにしてこれを作ったのだろう、こんなものを作る人生って、どんな毎日だったのだろうと、ただひたすら信じられない思いがして、何度も思わず頭を振ってしまいました。
山で植物を観察するとき、ルーペで見ると、世界が全然違って見えて感動することがあります。肉眼では見えない細かいところがものすごく緻密な構造になっていて、どこまでも繊細に、完ぺきに美しく作られているのを見ると、すぐ隣に、自分には知りえないこんなに豊かな別世界が広がっているのかと、異次元を垣間見たような、ある意味厳粛な、不思議な思いに打たれるのです。そこは、小さな生き物たちのための別天地です。
ところが。
今日見た刺しゅうは、自分と同じ、人間が作っているはずのものです。
なのに。
ルーペで見たくなるくらい細かい部分にまで、信じられないほど緻密で美しい造作が施されているのです。
それは、「どうして!?」「一体どうやって!?」と、
叫び出したくなるほど。
レースの衿を見ている時にはとうとう、あまりの緻密さ、美しさに、涙がこみあげてきました。この衿に魅せられて、手に入れたいがために破産した貴族がいるというのも、わかるような気がします。
展示会は24日まで開催されています。
お時間がある方は、ぜひ足を運んでご覧になってください。
人間の、不可思議なほどの素晴らしさに打たれます。
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