その後のこと(3) 生物多様性ガイド養成講座、締めくくり講義 ― 2018/04/16 18:20
一年と四か月受講してきた生物多様性ガイド養成講座が、ひとまず締めくくられることになり、2月中旬にテストがありました。講師をガイドするという、本人には厳しくても、傍で見ていると楽しい試験です。
3月に入って、結果の通知と締めくくりの講義がありました。もちろん試験は落第で、プロのガイドになるためにはまだまだ学びが続きます。でも、山への思いは伝わったようで、面白かったとお褒めの言葉をいただきました。そして、私が抜きがたく持っている癖についての指摘も。
テスト前はとても緊張し、必死になって勉強しました。
終わってから、不思議に思ったのです。受かるわけもない(間違って受かったりしたら途方に暮れる)のに、「だから適当でいい」と微塵も思わなかったのは、どうしてだろうと。
最後の講義のあとしばらくすると、いろんなことが腑に落ちた気がしました。テストの結果を伝えながら講師が一人一人に下さったコメントは、素晴らしいものでした。それぞれの特徴や癖をつぶさに見ている視点の正確さ、まっとうさ、細やかさ。一見長所に見えることの落とし穴や、欠点に見えるものが、こちらの姿勢次第で強味にできることも教えていただきました。山(自然)に対するときに失ってはいけない根本的な姿勢である、謙虚さについても。(それは、人として、何に対するときにも同じだと思います)。
思えば、山を歩いているとき、教わったはずの草花の同定ができなくても、責めるようなことは一度も言われませんでした。むしろ、「いやあ、ずいぶん変わったよ。目の付け所が違うもの」などと、いつも力づけていただきました。それは、点数で人に序列をつける姿勢とは根本的に違う、生きたものを育てるあり方です。
そして、一見どこまでもゆる~く温かく、気楽に見えながら、本当はものすごく真摯な講師の姿が、一緒に歩くうちにちゃんと伝わってきていたように思います。
だからこそ、「この一年で注いでいただいたものを、すこしでも自分のものにしたい」と、あんなに必死になったのだと思うのです。
本当に贅沢な、幸せな一年でした。
今までとは形が変わりますが、生物多様性の学びはこれからもずっと続いていきます。
※生物多様性ガイドのホームページができました!
.
「生物多様性」ってどういうことなのか、大切なことがとてもわかりやすく書かれています。写真もすご~くきれいです♪(わたしたちもちょっぴり登場します)
ぜひ、ここをクリックしてみてください。
.
ハナネコノメ。開花してすぐは可愛い赤い点々がついていますが、すぐに落ちてしまいます。とても小さな、早春の花です。
.
.
コチャルメルソウ。花がチャルメラに似ていることから。
こんなに可愛いのに(写真が下手でよくわかりませんが…)、
知らなければ通り過ぎてしまいそうな、小さな花です。
その後のこと(2)母のインフルエンザと東山魁夷展 ― 2018/04/13 22:04
お正月から3月の4日まで、八王子の美術館で東山魁夷展がありました。
母は若いころから東山魁夷さんのファンでしたので、ぜひ行かなくては!と計画しました。
1月は検診などがあったので2月に行くことにして、自分のペースで楽に鑑賞できるようにと歩行器を準備し、押して歩く練習もして準備万端!…のはずが、
なんと、計画していた日の直前に、母がインフルエンザで高熱を発してしまったのです。折悪しく三連休の初日で、発熱したばかりだとインフルエンザでも診断がつかないということで、解熱剤を出してもらって自宅で様子を見ましたが、翌日の夜、ちょっと不安な感じだったので数軒の休日診療の病院に電話するも満員(ちょうど、インフルエンザが猛威を振るっていたさなかでした)で受診を断られ・・・。母はもともと肺に病気をもっているのでかなり心配しましたが、解熱剤だけでなんとか乗り切り、火曜日にやっと診察が受けられました。それでようやく診断がついて五日間タミフルを飲み、幸い、肺炎は起こさずに治りました。
高熱や薬の影響か、治った後もいろいろな面でかなりの衰えが見られ、展覧会へ行くなんて無理かもしれないと一時はあきらめかけましたが、ゆっくりとながら徐々に回復し、こんなに近くで東山魁夷さんの絵が観られるチャンスはもうないかもしれないと、母の誕生日の翌日、会期末ぎりぎりの3月3日に、母と妹と3人でタクシーに乗り込み、思い切って行ってきました。
3人で絵を観に行ったのはずいぶん久しぶりで、前回がいつだったか、もう思い出せないほどです。子どもの頃は、結構いろんな絵を観に、母に連れられて行ったのですが・・・。
当日は、妹と手分けができたのでスムーズに行ってこられました。素晴らしい絵に感動し、嬉しそうな母の様子が見られ・・・いろんな思いが浄化されたような、あらゆるものに感謝したくなるような、ちょっと特別な喜びでした。
昨日のようにいくつかの出来事をまとめて書こうと思いましたが、
次の話題はとても長くなりそうなので、日を改めます。
今日は、ここまで。
新しいスタート、そして第2ラウンドの始まり ― 2017/09/13 11:11
日曜日は三鷹で
ライアーとオイリュトミーによる個人ワークショップをしてきました。
せっかくライアーと一緒にするのであれば、
「ライアーとオイリュトミーでなければできないこと」
がやりたいと探ってきて、
やっと手ごたえのあるプログラムができ、
新しいスタートをきることができました。
わくわく感とともに臨んだプログラムではありましたが、
ワークショップは一期一会の真剣勝負。本当にうまくいくかどうかはやってみなければわかりません。
実は、思ったより緊張していたようでした。
ほっとして、しみじみ嬉しくなったので、
帰りに高尾駅の一言堂に寄って
黒豆コーヒーと高尾ポテトで慎ましく祝杯を挙げ、
川沿いをゆっくり歩いて帰ってきました。
(高尾には、本当に豊かな時間がながれています)
大海に一滴のしずくを落とすような、
ほんの小さな営為ではありますが、
こういうときは、宇宙の仕事ができたような気がして
一人で悦に入ります。
夏休みが終わり、季節は一気に秋。
嬉しいスタートでした。
そして昨日は、自主学校「遊」の二学期最初の授業。
背が伸びて、ひとまわり大きくなったこどもたちと再会し、いよいよ第二ラウンドの始まりです。
めちゃくちゃ可愛くて、一筋縄ではいかないこどもたち。
手綱はゆるめに、でもしっかり握っています。
昨日は、今後につながる布石をいくつか打ってきました。
今学期も楽しそうです!
自主練・・・もどき ― 2017/09/04 17:40
先日、夫とともに裏高尾の日影沢林道を歩いてきました。
生物多様性ガイド養成講座でよく行くところです。
日影沢へは、高尾駅の北口からバスで行きます。一時間に1本か2本しかないのですが、利用者が多い時季には同じ時刻に出発するバスが3台あったりもする人気の路線です。
バスを降りると、日影沢林道の入り口へ向かう路上で、
すでにたくさんの花を見つけました。
飛んでいる鶴のようにすっと伸びる、真っ白な4枚の花弁(に見えるけれど本当はガクなのだそうです)を広げた、可愛い花が、センニンソウ。すぐ隣で、それよりちょっとにぎやかな感じに咲き誇っているのがボタンヅル、と、
持参した図鑑で見つけてわかりました。
山はいつも、数日ですっかり様子が変わります。
つい先日見た花がもう終わっていたり、新しく咲いた花があったり。
高尾山に特化したポケット図鑑を2冊持って行ったのですが、載っていないものもたくさんあって、わからないものだらけ。
帰ってから調べようと、とりあえず写真を撮ります。
いろんな草に引っかかって写真を撮りまくっている私を置いて、夫は先に立って歩きながら、ときどき目立つ花を指して「これは?」と訊きます。
思い出せたら得意満面で説明するのですが、
「確か教わったのに…えっと…」となることもしばしば。
そのほかに、なんだか知っているような気がするのに名前はわからない、というものもたくさんあります。
すぐに教えてもらえる講座の時が、どれほど恵まれているのかをしみじみ実感しました。
それでも、いくつかはわかったし、
夫が気づきもしないで通り過ぎようとする草花にどんなドラマがあるのか、
時には呼び止めて伝えることもできました。
嬉しかったのは、
名前を知っているかどうかにかかわらず、
花や草を見てその形や様子の特徴、つまり「その草らしさ」を感じ取り、愛でることが、
昔の自分よりずっとできるようになっていたことです。
講座が始まったばかりのころ、
あんなに自然が好きだと思って来たのに、実は何も見ていなかった自分に気づき、
いざ見ようとしても、ちっとも入ってこない感じがして、
自分には、自然を理解する思考回路がないのだと
悲しく思ったことがありました。
でも、今は違っています。
たとえ、同じように名前がわからない時でも、
なんとなく葉の特徴などに親しみを感じて、
本当はよく知っているんだけどなぁ!という気分になるのです。(それはそれで、とても悔しいのですが)
自分の変化を通して、
すぐそこに実際にある美しさ、貴さを感じ取るにも、それなりの感性が必要なのだ、ということがわかりました。
自分にその感性が開きさえすれば、
世界はものすごく美しく、神秘に満ちているのだ!
ということも。
何かを愛するということはきっと、その対象について、
感性を開いていようとし続けることなのでしょう。
それには、それなりの努力、
つまり時間とエネルギーが必要なのだ、
ということも、学んだような気がします。
たぶん、センニンソウ(間違っていたらお知らせ下さい)
虫は嫌いだったのですが ― 2017/08/17 10:28
生物多様性ガイド養成講座にも、
公演が終わって復帰してからは順調に通っています。
山は素敵ですしメンバーが魅力的な人ばかりで、
とても楽しいです。
…が、ひとつだけ、ちょっと困ったことがあります。
いま、山は虫の王国。
何しろ「生物」多様性ですので、
当然ながら虫も観察対象に入っているのです。
都会育ちの私は、虫が大の苦手です。
山を歩いているとメンバーの誰かが目ざとく虫を見つけ、
「無視して先へ行きたい!」と叫ぶ私の心をよそに、
ルーペまで持ち出しての観察が始まります。
「触角がゴージャス!」(唖然とするほど見事な幾何学模様の触角を持つ蛾がいたりします)
「この派手な模様!」(どう見てもおどろおどろしいと思うのですが、すごい柄の芋虫がたくさんいるのです!)
などと喜んでいる仲間をよそに一人顔をしかめ、
一応記録のため、おざなりに一、二枚だけ写真を撮るのですが…
先日、洗濯ものを干していたら、
ベランダで面白い柄の虫を発見してしまいました。
小さかったのであまり怖くなかったのと、柄がなんだか面白かったので、
こともあろうに、名前が知りたいと思ってしまいました。
写真がうまく撮れなくてボケボケだったのですが、
講座のメーリス(?)にアップすると、先輩や講師から、これではないか、というアドバイスをいただきました。
図鑑やネットの写真は、写真の撮れ方や個体差で、色や雰囲気がかなり違います。
実際に見たときの印象と写真との違いもあったりして、それぞれ検索したもののなんとなくピンと来ず、さらに調べてみました。
なぜ私が、よりにもよってこんなことをしているのだろう…と思いながら(しかもときどき鳥肌を立てながら!)虫の写真をたくさんみて、ようやく、
これに間違いない!という写真を見つけてすっきり。
違うものもさんざんさがした挙句、たどりついた結論はやっぱり、最初にアドバイスをいただいたとおりでした。私のあんなボケボケ写真でわかるなんて、さすがです。
翌々日。
やはりベランダの、今度は柵に、唐突に小枝のようなものがくっついていました。
「擬態だな」と思って調べると、比較的すぐに見つかりました。せっかく小枝のふりをしているのにスチールの柵にとまるなんて、間抜けぶりが可愛くて他人(他虫?)とは思えませんが、目立ちすぎるし、もし本当に小枝だと思ってしまったら何も考えずにぎゅっと拭きとって、
殺してしまったかもしれません。
擬態のせいで、逆に危険になってしまうわけです。
ちゃんと自分を知って、居る場所を選ぶべきですね。
…って、なんだか、深い(笑)。
さらにその翌日。また別の柄のカメムシを見つけました。
背中にハートをしょっていて、私が見てもちょっと可愛いです。今度は、先日いろいろ調べたときに見た記憶があるので、だいたい見当がつきました。
調べる場所もわかっているのですぐ出てきました。(ちょっと自慢していますね)
嬉しかったのは、ベランダから庭を見下ろして見つけた「ヤブガラシ」。ちょうど先日教わったばかりです。
山茶花の木に巻き登り、上の方の日が当たるところを占拠して、花を咲かせていました。
さすが「藪枯らし」と呼ばれているだけあります。
でも、ごく小さなオレンジの花が可愛らしく、先端をなめるとほんのり甘いのです。
蜜を集める小さな虫たちには大切なレストランです。
写真を撮ったら、ここにも虫がいました。
…というように、落ちこぼれ受講生の私も、確実に変化はしてきています。
何よりも、植物や昆虫など、自分たちとまったく違う生き方をしている者たちのことを知ることで、
視野がずいぶん広がりました。
世界は生き物によって、空間的にも時間的にも、
とても多重なあり方をしているようなのです。
もしかしたら同じ人間同士でも、
人によって見ている世界はかなり違うのかもしれない…
などと、このごろふと思ったりもしています。
最近のコメント