絶望からのV字回復2020/06/26 10:06

この二日間は、

絶望したり幸せになったりで忙しかったです。

 

私は、神経痛の持病を持っています。

甘いものを食べると痛むのはわかっているので、

もうずっと、食べていません。

特に夜がつらくて、

朝は起きればほぼ治るのですが、

時には痛みで眠れないこともあります。

 

 

母が病院にいる間、

それはだんだん治っていっていました。

これを飲むと大丈夫!

なんていうものもみつけて、

もう大丈夫かな、と思っていたのです。

 

それが。

母が退院して六日目の夜。

 

その晩は、せっかく

翌日会社が休みの妹が

母の横で寝てくれていたのに、

痛みが出て、一晩中眠れなかったのです。

 

しかも、いつもは朝になれば治るのに、

起きてからも、かなりの痛みが続きました。

 

もう、ダメだ。

これではとても続かない。

まだ、たった一週間なのに…

 

でもやっぱり、

母と家で一緒に暮らしたい。

それは間違いなく。

 

でもやっぱり、

とても無理だ。

こんな体で、夜の介助はできっこない。

 

でもやっぱり…

 

思いは堂々巡りを続けるばかり。

 

 

これまで、家族には

神経痛のことは言っていませんでした。

でも、一人では抱えていられない。

 

 

私は月に2回、

自主学校「遊」でオイリュトミーを教えています。

その日は授業の日だったので、

痛みを抱えながら出かけていきました。

途中、家族にメッセージを送り、状況を伝えました。

 

 

授業は、無事にできました。

前のブログでも書いたように花束ももらったし、

可愛いこどもたちに力をいっぱいもらえ、

なにしろ、やっていることが、

オイリュトミーです。

帰りには、痛みもずいぶん楽になっていました。

 

 

これ、結局のところ、原因はストレスってことだ…

 

 

実をいうと、ひどい痛みが出る前の晩も、

夜中の介助をしながら少し痛んでいました。

 悪い病気じゃないか、

どんどんひどくなるのじゃないか

と怖くなってきて、

ふと、

母より先に死んでしまうかも…

なんて、考えてしまったのです。

 

それに、

母を置いてはいけないので、

とても大切に思っている勉強会を

休まなければならなかったりもしています。

 

ずっと眠れなくて、

やっとトロトロした明け方に起こされた時には、

自分には人権はないのか‥なんて、

思ったことも。

 

 

夕飯後、

 

娘が電話をくれました。

去年結婚していて、

お相手は、作業療法士として病院に勤めています。

すごく勉強熱心で、医学的なことにも詳しいのです。

 

いろいろ訊いてくれました。

久しぶりに娘の声を聞き、

相変わらず仲良さそうな、二人のやりとりを聞いたりしていたら、

すっかり明るい気分になりました。

 

 

その夜は、

二晩続きで妹が母と寝てくれました。

みんなの気持ちがもらえたし、

オイリュトミーもできたからでしょう、

こんどこそ、ぐっすり眠ることができました。

 

 

翌朝。

母はいつものようにRIONさんへ。

妹は、夜の睡眠不足を補うために寝ています。

前日ヘルパーさんのシャワー浴があったので、

洗濯物がたくさんなのに、お天気は今一つ。

近所のコインランドリーへ、

洗ったものを乾かしに行くことになりました。

 

夫とふたり、

洗濯物を自転車に積んで出かけようとしたら、

突然、ものすごく幸せな気持ちに包まれました。

思わず涙ぐんだほど。

 

以前から、

夫と自転車で出かけるのがとても好きだったのです。

 

洗濯物が乾くのを待ちながら、

近くの川を散歩しました。

もうすぐある、

オイリュトミーの個人指導の内容などを相談しながら。

 

よく考えたら今週は、昼間も、

ずっと母のそばにいてあげなくてはならないし、

退院後の手続きやら何やらで、

夫とこういう時間を持つことも

できなくなっていました。

 

…そういうことか。

 

そして迎えた昨日の夜。

母のそばのベッドに横になったとき、

しみじみと感じました。

 

 幸せだなぁ…

 

そう。

夜中の介助だって、

本当は嬉しいことなのです。



            陵南公園北側の木立。ここを散歩しました。

野草の力2020/06/24 15:56

オイリュトミーの授業でお借りしているホールは、

遊の校舎から歩いて10分ほどのところにあります。

 

こどもたちは、授業に来るとき、

ときどきお土産を持ってきてくれます。

 

前回は、2年生の女の子が

 

「あれ? どこへいった?」

と探した挙句、床に落ちていたものを拾って、

「あった! これあげる!」


一瞬、動物の「落とし物」かと思いました。

 

「生姜だよ!遊にいっぱいあるの。掘ると出てくるんだ」

 

私の表情は、一瞬で激変したと思います。

気づかれなかったかなぁ。

 

写真を取り忘れました。

失敗です。

 

 

そして、昨日。

 

3年生の男の子が、来るなり

「はい、これあげる!」

 

小さな、ネジバナの花束でした。

 

「来るときに摘んできたんだよ」

 

こどもとは言え、

男性からいきなり花束をもらうなんて、感激です。

 

 

大事に、ピアノの上に飾りましたが、

そのあと、3クラスも置きっぱなしになってしまったので、

家に帰った時にはしおれていました。

 

ダメかと思ったのですが、

野草の生命力に期待して、小さな花瓶に活けてみました。

 

今朝、一番に見に行くと。

元気に復活していました!

 

斜めに活けたので、

先端部分がみな、少し曲がってまっすぐ上を向いています。

 

小さな野草の持っている、大きな力。

 

やさしい遊の子どもたちはきっと、

こんな力を持った

力強い人に育っていってくれると思っています。





えっ! そういう展開!?2020/06/21 17:51

一昨日は一瞬、

修羅場を覚悟しました。

 

以前みた、

「ぼけますから、よろしくお願いします」

という映画でも、

最初にヘルパーさんがいらしたときに

かなりの抵抗があった様子が描かれていました。

お年寄りにとって、

「ひと様」のお世話になるのは、

よほど大変なことのようなのです。

 

一昨日の夕方は、

ヘルパーさんが来てくれて

2回目のシャワー浴でした。

1回目は担当者会議の時でしたから、

実質的には初めてのようなものです。

 

2時ごろ、RIONから帰ってきた母に、

3時からヘルパーさんがいらして

シャワーを浴びさせてくれるからね」

 というと、

 「とんでもない! お風呂なんか一人で入るわよ!」

 強い拒否の姿勢。

 

 喉元まで出かかった、

そんなことできっこないでしょう!

という言葉を、ぐっと飲み込みます。

 

困った…

これは大変なことになるな…

 

そして3時。

ヘルパーさんが来ました。

 

ドアが開くと、

「お帰りぃ~

 

ん?

なにか勘違いしている?

 

ヘルパーさんを、

妹だと思っている様子です。

 

それでも、

さすがに顔を見れば気づくだろう

と思ったのですが。

 

「疲れたでしょう。お帰り」

 

 

さすがヘルパーさん、

機転も利くし、演技派です。

「じゃあ、私と一緒にシャワーを浴びようよ♪」

なんて言ってくれて。

 

母は、

いそいそとシャワーを浴びました。

 

自分が終わると、

「あなた、頭も顔も、ちゃんとお洗い」

いつもの大阪弁で言っています。

母は大阪の出身なのです。

 

ヘルパーさんは、

「あ、ばれたかぁ。

お母さん先にちゃんとお洋服着ちゃって。

  そしたら洗うよ」

 と母に服を着させて部屋まで連れていき、

私が母にドライヤーをかけている間に着替えて、

タオルで頭をふきふき入ってきました。

「あ~いいお湯だった」

「ちゃんと入った?よかった」

母にっこり。

 

脱帽です。

 

それにしても…

 本当に、そんなことを思い込むものでしょうか。

 だって、ちっとも似ていないのです。

 いぶかしがっている私をよそに、

 「じゃあ、帰るね。また今度」

 と言うヘルパーさんの手を握り、

 母は

 「あらぁ、さみしいねぇ」

 なんて言っています。

 

 一緒に住んでいる妹が、

 どこかへ帰るはずなんかないのに。

 

夜、本物の妹が帰ってきて

「今日、シャワー浴びたんでしょ?」

というと、母は

「うん。昨日ね」

と澄ましていました。

今帰ってきたばかりの妹と

シャワーが浴びられるわけがないので

昨日のことにしたようです。

 

それでもやっぱり、

娘と一緒のお風呂が嬉しかったのでしょう。

そのあともずっとご機嫌でした。

 

認知症も、

時には粋なことをしてくれるものです。





わからなくなっていく恐怖2020/06/20 18:26

いろんなことが分からなくなっていくというのは、

どれほどの不安でしょうか。

時々、母の気持ちを想像してみます。

 

昨日も、可哀想なことがありました。

 

平日、

母は9時ごろから14時近くまで、

デイサービスRION

トレーニングしてもらってきます。

 

睡眠薬を飲まなかったので、

昨日は元気に参加できたようです。

前日とは全く様子が違ったと、

リオンさんがニコニコ報告してくれました。

 

そこまでは順調だったのですが。

 

ひと騒動があったのは、

帰ってきて小一時間たった頃でした。

 

私が、

早く母の部屋へいかなくちゃ、と思いながら

やりかけの仕事を片付けていると、

手を叩いて呼ぶ音がしました。

行ってみると。

 

「ここのことが、何もわからなくなった。

私、本当に馬鹿になってしまった…

どうしよう、怖い…」

 

母は、涙目になってプルプル震えています。

 

自分が今どこにいるのか、

わからなくて不安になったようです。

 

「大丈夫だよ…一緒にいるよ…

 そうやって、ちゃんと話してくれられているから、

 頭おかしくなんかないよ…」

 

手を握ったり背中をさすったりしていると、

しばらくして、だいぶ落ち着きました。

 

けれど。

「何か甘いものが食べたい」

と言いだしました。

 

不安になったとき

甘いものが欲しくなるのはわかります。

認知症によくないと言いますが、

そんなことも言っていられません。

 

でも。

持ってきたものをあっという間に平らげて、

いうのです。

「こんなの、すぐになくなった。

もっと、もっと、たくさん食べたい」

 

う~ん…。

 

言い方が、

なんかちょっとおかしいのです。

押しが強すぎて、

どこか、普通じゃない感じ。

 

認知症の方が、

食欲異常をおこして

ものすごく食べてしまったりなさることがある

という話はよく聞きます。

 

こんな感じなのかな…

 

不安で空いてしまった胸の穴を

食べ物で埋めようとしているような。

 

切ないね…

でも、食べるのは我慢しようね。

 

またまた、

ソルフェジオ音叉のCDが登場です。

不安な時にいいという音をかけてみました。

 

それが効いたのかどうかはわかりませんが、

案外すっと、

それ以上は言いつのらなくなりました。

 

部屋からパソコンを持ってきて

母の横で用事をし始めました。

「本が読みたい」というので

本棚から、母の大好きな

田辺聖子さんの本を持ってきたのですが、

古典の紹介本だったので

ちょっと難しかったようです。

ご愛用の「天眼鏡」こと虫メガネを片手に

「うーん。これは何と読むのかわからない」

などと言って苦労しています。

 

でも、

穏やかな時間が戻ってきました。

 

夫が夕飯を作ってくれている音がします。

妹も、もうすぐ帰ってくるでしょう。

 


              高尾山。樹々の間を抜けていく道。

草木も眠る丑三つ時2020/06/19 17:26

火曜日に、母は退院してきました。

骨折した日から、ほぼ4か月がたっています。

 

夫は、親せきに取り込みがあって急遽帰省したので、

妹と三人、しみじみと昼食を食べました。

 

ほっとしたのもつかの間、

3時から、介護保険の「担当者会議」です。

ケアマネさん、デイサービスのリオンさん、

福祉用具の業者さんと、入浴サービスのヘルパーさん。

 

さまざまなプロの観点から、

可能な、よりよい支援を検討してくれます。

初めてヘルパーさんにシャワーも浴びさせてもらい、

終わったのはもう、6時近く。

 

問題はやっぱり、夜中でした。

夜は10時少し前にベッドへ入り、

すんなり眠りについたので安心したのは束の間のこと。

11時半ごろに最初のトイレ。

次は12時過ぎでその次が2時。

 

その、2時の時でした。

トイレから戻ると、

「脚が痛いから、服を着せてください」

訳のわからないことを繰り返し言います。

どうしたらいいかわからないし、ちっとも寝そうにないので、

病院からいただいてきた、

「眠れないとき」とかかれた頓服を飲んでもらいました。

  

お薬の効き目はばっちりでした。

ところが。

そのあと、5時半ごろに起きてトイレに行ったとき、

体は前かがみになったままだし、足がうまく動かないのです。

さんざん苦労しました。

  

そして、朝。

デイサービスRIONへ行かなくてはならないのに、

全く起きる気配がありません。

ぐ~すかぐ~すか

昨日の夜が恨めしいほどの眠りようです。

 

1時間遅れでなんとかRIONへは行けましたが、

あちらでも、ずっとウトウトしていたようです。

午後、帰ってきてからトイレに行くときにも、うまく足が動かず。

そのあと少し居眠りをして、やっと調子が出てきました。

 

お薬って怖いものだなぁ…

 

夜中の2時に飲んだので、

余計に遅い時間までずれ込んだのでしょうが、

「眠れないとき」のための頓服を、

夕食後にあらかじめ飲んでおくわけにもいきません。

もう、そのお薬は飲まないことにしました。

 

 

そして迎えた2晩め。

少し前に、ソルフェジオ周波数の音叉の音を集めたCDを買っていたので、

その中の、強力に眠くなるという音を一晩中かけてみました。

いかにも落ち着きそうな低い音。

単調な音叉の音が、ずっと続きます。

 

結局、

10時に寝てから7時過ぎに起きるまでに、

7回のトイレ。

そして、問題はやはり、2時に起こりました。

 

トイレで粗相があったので、

先にベッドへ戻ってもらってから掃除をしに行ったのですが、

終わって戻ってくると、母の様子が不穏です。

「寒いのに、布団がきちんとかかっていない」

と文句をいうので何度かけなおしても、

綿毛布を足して足までしっかりくるんでみても、

「これじゃあ乗せただけ。ちゃんとかかってない」

というのです。

 

しかも、

「いつだって、こっちの言うことなんか聞かないで、自分たちの都合で

適当にびゃあびゃあっとやるだけなんだから」

と不満をぶつけてきます。

 

むっとしました。

「ちゃんとかかっているじゃない。ほら」

 思わず声を荒げると、妹が起きてきました。

 やっぱり、足をくるみなおしたりして、

 「ほら、これならいいでしょ?」というのに、ダメです。

 「ちゃんとなってるのに、これ以上どうしてあげようもないよ」

 と言っている妹を横で見ていたら、ふと思いました。

 

ひょっとして、これって八つ当たり?

 

 トイレで失敗してしまって、母は

 しまった、と思ったに違いありません。

 やるせない気持ちが、

 ひっくり返って出ているとしたら。

 

 …気分を変えてあげるしかないな。

 

 

今回の骨折で一番つらかった最初のころ、

母のベッドサイドで

ずっと子守唄をうたっていたことがあります。

今日も歌おうかと思ったとき、

ソルフェジオ音叉の音が耳に入りました。

 

まるで子守唄みたい…

 

気持ちがふうっと緩みました。

 

気づいたとき、

母は眠りに落ちていました。

次に目が覚めたときにはご機嫌で、

トイレに連れていくと「ありがとう」を連発。

朝にはすっきりと起きて、

にこにこRIONへ出かけていきました。

 

それにしても。

トラブルが起こったのは、どちらも2時。

丑三つ時かぁ…

お化けが出るわけじゃないけれど、

なんだか妙に納得です。


 写真の花はトケイソウです。
 母が眠れなかった時のために、「ヴァレリアン(トケイソウ)&パッションフラワー」
 というチンキも用意していました。