河合隼雄「中空構造日本の深層」・高橋源一郎「ぼくらの民主主義なんだぜ」 ― 2015/07/10 21:24
最近読んでいる本をちょっとご紹介します。
まず読んだのが「中空構造日本の深層」河合隼雄著。
普通の視点とは違う角度から光を当てた深い日本人論が収録されていて、なるほど!と膝を打つ感じがあります。いま起こっているさまざまな若者の問題について、安易に「父権への回帰」を叫び、締め付けの強い教育、ひいては徴兵制までをも云々することの愚を解いていられて、
今の時期に読めて良かったと思いました。
そしていま読んでいるのは、
「ぼくらの民主主義なんだぜ」高橋源一郎著 です。
タイトルも魅力的ですが、帯の言葉「絶望しないための48か条」に強く惹かれました。
あまりにでたらめなことが力任せに横行していて、絶望的な気分になることも多い昨今、救いがほしかったのです。
朝日新聞の連載「論壇時評」を本にまとめたものでした。
納得できる、確かな言葉の数々に触れ、絶望しないでやっていこう、と思えるようになっています。
いま、私たちが、大変な歴史の転換点にいるのは確かなことです。
戦後70年をかけて周到に外堀を埋められてきて、
いよいよ本丸が攻め落とされようとしている、という感じがします。
(今、こう書きながら、自分が無意識に使っているたとえが、戦いに基づくものだということに、ああ、やっぱり、という気がしています。
「まず、自分から」というのはこういうことなのだろうと思います)
そこかしこにさまざまな不条理が見られます。
進歩だと思って進んできた中で、見失ったものはたくさんあると思いますが、
かといって、昔がよかったということではありません。
気付いていなかった、見ずに来てしまった物事にしっかり目を開き、ここまでの歩みを大切な学びとして、
いままでなかったものを、新しく作らなければならないのです。
「ほんとうのこと」を見通そうとするとき、「道」は一つではないことがわかります。
それぞれの場所で真摯に取り組んでいる方々が、実はたくさんいらっしゃいます。
何も見ずに来た自分を反省して目を見開いてみたら、悲しいこと、あってはならないこともいろいろ見えましたが、
いま日本中で、たくさんの希望の種が芽吹き始めていることも見えてきました。
その、人々の、自分にとっての「ほんとう」を求める思いから発した自由な試みが、
十全に育っていける環境を確保するために、
とにかく今は、すべてを「力」で押し潰そうとする流れを何とかしたいのです。
初めは、「流れを押しとどめる」という言葉を使おうと思いました。でもそれでは、同じ「力」の勝負になってしまいそうです。
どうしたらよいのでしょうか・・・
やはり、「道」は一つではないのでしょう。
さまざまな場面で、心の中に、
谷川俊太郎さんの詩の
「そして かくされた悪を注意深くこばむこと」
という言葉が響きます。
北村薫さんの小説の
「本当にいいものは、太陽のほうを向いている」
という言葉も響きます。
個人の内面のごく繊細な次元から、もっと大きな、社会的な次元まで、
すべてを包含する、言葉の力。
すぐに壊れてしまう、柔らかくて繊細な、
そして、
すべてを生み出した、ものすごく根源的で大きい、
力です。
自分は、それを信じてやっていこう、と、
あらためて思っています。
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