おかしみについて2010/06/08 19:03

公演PSALMに行ってきました。
CORVUSという、ペルセパッサで一緒だった仲間二人の新ユニットの初公演です。
知性も感性もバッチリの二人が組んだユニットなので内容も期待できましたし、
チラシもとても個性的で、公演のためのHPもセンスがよく、楽しみに思っていたら、
期待にたがわず、とてもかっこよくて愉しい公演でした。

細かい感想は本人たちに伝えたのでここには書きませんが、
伝えそこねたことが一つありました。
他の方の感想に滑稽さについての言及があって、それがとても大事なことだと思ったのです。

なにしろ長身のイケメン二人なので、立っているだけでもとてもかっこいいのですが、
男二人、というところで既に、ある種のおかしみが漂います。
ペルセパッサにいたころも、男性ばかりのパートを「メンズ」などと呼んでいたのですが、彼らが稽古しているところを傍から見ていると、当人たちは至極まじめにやっているのに、なんだかとっても可愛らしくておかしくて、なんていい奴らなんでしょう、と、
密かにニヤニヤしていたものでした。

どうも、このおかしみは、男性に特有のもののように思うのです。
ずっと以前にも、男性の詩人のユーモラスな詩をオイリュトミーでやってみたいと思って、どうしても私にはこのおかしみが出せないなぁ、と断念したことがあります。

かっこよさとおかしみは対立するものではなく、おかしみを失ったら魅力も消えてしまう感じがします。それは、男の色気、と言ってもいいもののように思うのです。
女性の私から見ると、とてもうらやましいものです。
男装でもしてみたら、あの感じが出せるでしょうか。

西行2010/06/24 23:10

 

夕焼け


白州正子さんの「西行」を読んでいます。

毎晩、寝る前のほんのちょっとした時間を使って少しずつ読んでいるので

遅々としか進まないのですが、

極上のごちそうのような本なので、

ゆっくり味わいながら楽しんでいます。

 

西行はとても魅力的な人物で、謎も多いので、

深く愛し、研究している方がとても多く、

以前、言葉のオイリュトミーで歌を何首か取り上げさせてもらった時に、

少し調べ、本も何冊かは読んだのですが、

その程度ではほんのとばくちに過ぎません。

謎が多い分、それぞれが自分の思いを投影しやすい部分もあるのでしょうか、

どの方の論も、西行への熱い思いに満ちたものばかりです。

 

白州さんの口跡は潔く、ときにばっさりと定説(とされているもの)をも

覆されるのですが、その説得力の前には、なるほどそうに違いない、と

頷くしかありません。

すぐに「さて、皆さんはどうおっしゃっているかしら?」

などと考えてしまう私にとっては、それがまたこの上ない快感です。

 

そんな小心者ではありますが、作品として舞台に乗せるにあたっては、

歌の選び方も並べ方も解釈も、自分の思ったようにやらせてもらいました。

どこまで学んだところで、

万人にとってこれで絶対に間違いない、というものになど

たどり着けるわけもないのですから、開き直るしかありません。

だからといって、

好きに作っても良いというわけにはいかないのがまた面白いところで、

あくまでも、少なくとも自分の中では「これでよし」と頷けるところまで

「客観的に」読み極めなければ納得のいく作品にはならないのです。

 

「恋歌」をやってみたい、という思いから始まり、

西行の世界に浸り、自己を滅して西行に近づきたいと思ったのに、

結局舞台の上では、

西行なのか自分なのかわからなくなってしまった作品でした。

でも、この本を読んだおかげで、

なにはともあれ、あれはあれでよかったのだ、と思うことができて、

嬉しかったりもしています。

 

ゆっくりゆっくり読んでいるのですが、そろそろ終わりが近づいてきました。

「読み終わってしまうのが怖い」という気持ちを、

久しぶりに味わっています。